【譜読みの基礎】音部記号(ト音記号・ヘ音記号・ハ音記号)の役割と使い方を徹底解説

🎵 音部記号の基本

音部記号の役割(なぜ必要か)

五線譜は5本の線と4つの間(スペース)で構成され、音の相対的な高低(音程)を示します。しかし、この線と間が具体的にどの高さの音(絶対的な音高)を表しているかは、五線譜だけでは分かりません。
音部記号(Clef)は、五線譜の左端に書かれ、特定の線上の音が「G4(ソ)」「F3(ファ)」「C4(ド)」のどれであるかを定めることで、楽譜全体の音の高さの基準を決定する役割を持っています。
つまり、音部記号は五線譜に絶対的な音高を与えるための「目印」です。

3つの基本記号と基準となる音

音部記号の基本となる種類は、定める音の音名由来する3種類です。それぞれの記号は、異なる音域を効率よく表記するために使い分けられます。

画像名前
(日/英)
基準音主な音域
ト音記号 五線のないト音記号のみの譜例 ト音記号
G Clef
G4の音高音部
ハ音記号 五線のないハ音記号のみの譜例 ハ音記号
C Clef
C4の音中音部
ヘ音記号 五線のないヘ音記号のみの譜例 ヘ音記号
F Clef
F3の音低音部
  • ト音記号の形はアルファベットの G から、ヘ音記号は F から、ハ音記号は C からそれぞれ変化したものです。
  • ト音記号:渦の中心がソ(G)の位置
  • ヘ音記号:2つの点の間にある線がファ(F)の位置
  • ハ音記号:記号のくぼみの中心がド(C)の位置

🎵 ト音記号(高音部の基準)

形と基準となる音

ト音記号 ト音記号はG4を高さを基準とする譜例 G4 G Clef

ト音記号(G Clef)は、音部記号の中で最も一般的で、その形は装飾されたアルファベットの「G」に由来します。

  • 基準となる音: ト(G、ソ)
  • 基準位置: 記号の渦(うず)の中心

通常、ト音記号は五線の第2線を渦の中心が通るように書かれます。この第2線上の音が、中央ハ(C4)のすぐ上にある「ソ(G4)」であることを示します。ト音記号は主に高音域の記譜に用いられるため、「高音部記号(Treble Clef)」とも呼ばれます。

主な用途(楽器・声部)

ト音記号は、高い音域を効率よく表記するために使用されます。

  • 鍵盤楽器: ピアノの右手のパート
  • 弦楽器: ヴァイオリン、ギター、ハープ
  • 木管楽器: フルート、オーボエ、クラリネット
  • 声楽: ソプラノ、アルト、テノール

テノール歌手の楽譜は、ト音記号の下に小さな「8」が付いた「オクターブ下げト音記号」で書かれることがあります。これは、書かれた音符よりも実際には1オクターブ低い音を出すことを示します。

🎵 ヘ音記号(低音部の基準)

形と基準となる音

ヘ音記号 ヘ音記号はF3を高さを基準とする譜例 F3 F Clef

ヘ音記号(F Clef)は、主に低い音域を表記するために使用され、その形はアルファベットの「F」が変形したものに由来します。

  • 基準となる音: ヘ(F、ファ)
  • 基準位置: 記号の右側の2つの点の間にある線
  • b

通常、ヘ音記号は五線の第4線を2つの点が挟むように書かれます。この第4線上の音が、中央ハ(C4)のすぐ下にある「ファ(F3)」であることを示します。このため、「低音部記号(Bass Clef)」とも呼ばれます。

主な用途(楽器・声部)

ヘ音記号は、ト音記号よりも低い音域を扱う楽器や声部に適しています。

  • 鍵盤楽器: ピアノの左手のパート
  • 弦楽器: チェロ、コントラバス
  • 木管楽器: ファゴット、コントラファゴット
  • 金管楽器: トロンボーン、チューバ
  • 声楽: バス、バリトン

ヘ音記号の五線譜とト音記号の五線譜を上下に並べ、真ん中に中央ハ(C4)を挟む形でつなげたものを「大譜表(Great Staff)」と呼びます。これは主にピアノ譜で用いられます。

🎵 ハ音記号(中音部の基準)

形と基準となる音

ハ音記号 ハ音記号はC3を高さを基準とする譜例 C4 C Clef

ハ音記号(C Clef)は、主にト音記号とヘ音記号の中間にある音域(中音部)を表記するために使われます。その形はアルファベットの「C」が変形したものに由来します。

  • 基準となる音: ハ(C、ド)
  • 基準位置: 記号の左右のくぼみ(交差点)の中心

ハ音記号の最も重要な特徴は、このくぼみの中心が、常に中央ハ (C4) の位置を示すことです。この記号は、五線のどの線上に置かれるかによって、その名称と音域が変化します。

ハ音記号の応用:位置による名称の変化

ハ音記号は、置かれる位置が変わることで、ト音記号やヘ音記号では加線が多くなってしまうような特定の音域を持つ楽器や声部にとって、読みやすい楽譜を提供します。

現在、主に使われているのは以下の2種類です。

名称基準となる線主な用途特徴
アルト記号
アルト記号 第3線にC3の高さをもつアルト記号の譜例
第3線ヴィオラ、アルトトロンボーン第3線が中央ハ (C4) の位置
テノール記号
テノール記号 第4線にC3の高さをもつテノール記号の譜例
第4線チェロ、ファゴット、トロンボーン(高音域)第4線が中央ハ (C4) の位置

過去には、ハ音記号が第1線、第2線に置かれた「ソプラノ記号」「メゾ・ソプラノ記号」も存在しました。現在、ハ音記号はヴィオラの楽譜(アルト記号)や、チェロなどの高音域(テノール記号)で頻繁に使用されています。

🎵 まとめと音域の比較

音部記号のまとめ

音部記号は、楽譜に絶対的な音高を与えるための基本要素であり、以下の3つの基本タイプと、その派生形で構成されます。

日本語名英語名基準となる音主な音域主な用途の例
ト音記号G ClefG4(ソ)高音部ヴァイオリン、フルート、ピアノ(右手)
ハ音記号C ClefC4(ド)中音部ヴィオラ(アルト記号)、チェロ(テノール記号)
ヘ音記号F ClefF3(ファ)低音部チェロ、コントラバス、ピアノ(左手)

中央ハ(C4)の位置と音域の比較

3つの基本記号を比較する際、中央ハ(C4)の位置がどこになるかを知ることが、音部記号の理解に最も役立ちます。

記号中央ハ (C4) の位置音域の目安
ト音記号五線譜の下第1加線高い音域
アルト記号五線譜の第3線中くらいの音域
ヘ音記号五線譜の上第1加線低い音域

音部記号は、それぞれの楽器や声部の主要な音域が五線の中に収まるように選ばれます。これにより、加線を多用することなく、楽譜を効率的かつ見やすく表記することが可能になります。

湖口浩朗(こぐちひろあき)

Seegmund Music Labo 代表 / 洗足学園音楽大学 非常勤講師

音楽理論家・教育家。作曲を専門とし、洗足学園音楽大学作曲コースを首席で卒業。在学中、鈴木純明、古曽志洋子の各氏に師事。現在、母校の非常勤講師として後進の指導にあたる。
サイト外で個人レッスン受付中。詳しくはプロフィールページで。

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